音個の速度 一瞬の連続の一生(Web連載版)第二回

尼崎市アルカイックホール。かつて2010年に、音個のギターヒーローであるJeff Beckがそのステージに立って演奏する姿を観ながら、彼は涙をながし続けていたようだが、もし僕が、その泣き顔を見ていたら、きっと笑ってしまうな。吹き出すに決まってるな。あの人相の悪さで。柄にもなさすぎる。だって、この人間にまだ、残ってたか、涙が、その、輝きが。

ほう、なかなか健気ではないか。

そしておそらく、泣き所は、「Never alone」のサビからソロにかけて、に違いない。なぜなら彼には、ともだちがいないからだ。

いなかった、と僕はそう聞いている。

長らく、完全に、「ひとりっきりでひとりぼっち」以外の何者でもないのだが、「ひとりじゃない」とか自己を欺むいてみたりに、「孤高な自分」というナルシシズムに浸ったり、孤独感を慰めたり癒されたりしているんだろうきっと。考えたら実にこっちが恥ずかしい。サムすぎる。気持ちがわるい。幻想(ファンタジー)への逃避を夢見るのもたいがいにしろ。いい加減、現実を見ろ。生活に足をつけろ。

 しかし、あの時は健気だったはずの音個が、この時は、そのステージ上に混沌を展開していた。それはカオスそのものだった。さもブラックホールのなかみをぶちまけたかのようだ。あるいはビッグバンのその瞬間? 「永遠」の爆裂? 音個は音を破壊していた。その「音を破壊する音」が、また、たまらなかった。いや どんな音かと訊ねられると、大変、応えに困る。単に、カオスなステージっぷりを表現したいがための、たとえだからだ。勘弁してくれたまえ。

 音個の演奏は、ほぼ完全な即興であった。まちがいない(ここでまちがいない、と強調しておかなければわからなくなるほどの完成度であった…)。おそらく、今さら彼に曲を覚える意思などなかっただろう。それにしても、圧倒的なカオス。僕はそれを聴き、目撃したといわざるを得ない。それは、ほかのどのアーティストのステージにも観聴きできない、オリジナルにして普遍の現象であった。気がつけば僕は歯を食いしばりながら汗をかいて、音個の一切を凝視していた。

僕は音個につきあわさないで済むように祈り願いながら、そして実際に会うことなく会場を抜け出た。

 数ヶ月、もしくは数年、彼はライヴをやらないだろう。プロフェッショナルとして音楽をやっていない彼の活動は、当然、生活に限定される。聞いた話では彼は「あくまで冗談で、音楽をやっている」のだとか。しかし別の場所では「音楽やってて生活面で得をしたり金銭的に黒字が出たことなど、いままで一度もない。おれが音楽をやるのは美しいからだ。また快いからだ。それだけでじゅうぶんだ」と言っていたりもする。まあ、そんなことは問題ではない。僕は観た。インターネットのある筋において、過去の、とてつもない地獄の深みから這い上がり、音個が「混沌コントロール」という、まるでダジャレなネーミングで、その独創性が世界的に認知され、成長を遂げており、ステージにおいてそれを証明する姿を。

 しかし確認したはいいものの、それから数ヶ月してから、ライヴをやらないどころか、僕も風の便りできいたのだが、警察に捕まり、勾留され、釈放されたあと、行方をくらませた、というのだ。

そして、ここからが音個の手による「獄中記」の出番だ。

一人では怖いのでみんなで一緒に読むとしようか。いや、そんなにまだ急がなくていい。「獄中記」とはまた別に、僕の手元にある、音個自身の手による日記、雑記をもとに、すこしずつハナシを進めていくとしよう。つまらなかったらごめんなさい。

とりあえず、さきに謝っておく。

それが僕のやり方だ。チキン野郎にはチキン野郎の生き方がある。いやあえて僕はそれを、「生き様」といいたい、「生き方」ではなく「生き様」と言いたい。おれの「生き様」と堂々といえるおとこになりたい。胸を張って「生き様」を誇れるおとこになりたい。

 まってほしいでも!「生き様」と、ここでいってしまうと、僕があいつの日記帳「音個の生き様」をまねしたみたいじゃないか。ま、一千分の一くらいなら影響されてた、気づかないうちに、そういうことかもしれない。

 まあ、いい。最後くらいは、花を持たせてあげようじゃないか!

 さあ、それでは件の、犯罪にいたった当日のことを、僕の創作なんかも付け加えてみなさんに読んでいただこう。彼は記憶がないところが多いようなので、仕方なく、僕がここで、創作をいれて…創作秘話を付け加えまして、そしてみなさんが、愉快に読んでくださると僕はいやいやながらも、はずかしながらも、僕の創作を、無理してまで、付け加えたことに、意義がもてる。僕も戦った、と、声を大にして言い張れる気がする。これでも、僕だってアーティストの端くれだ。僕だってものかきだ。ものかきに、なりたい、そう思ってる。だからこのハナシさえ、あたってくれたら、あいつはもう、いなかったことにしてもいい。

 最低の人間、そのことばがこの音個にはぴったりだ。 それに、実際、音個は、一時期、万引きだけで生活していた時期がある。彼は病気だった。精神科に通院していた。生まれつきの不眠、睡眠障害が、その通院の理由であった。実際はADHD(発達障害、脳障害)だった。日本にそれを診れる医者がほとんどいない。覚せい剤か大麻、それしか今のところその障害に有効な薬がないという「完全にこの国に住んでいてはいけない人間」これは彼の親友で、ある夜、石垣島で台風にのみ込まれて死んでしまったミュージシャンが常々いっていた言葉だ。そして、もっとも、精神状態が低下していた時期、ずっと実家の屋根裏部屋を出なかった。当然、カネはないし、働けるような状態でもない。風呂に入る気力がなかったのだ。それも、一ヶ月以上、風呂に入っていない、もう、ともかくしんどい!そんな時期だった。

 カネを稼ぐ当てがない。だから、ひたすら万引きを繰り返し、そうやってなんとか、生き延びていた。罪悪感は、微塵もなかった。何も感じない。おれがなんとか生き延びるために、油断してるところから、奪い取ればよい。管理不足だ。商品を安易に陳列しすぎだ。もし、法律がなかったら、「Take Free!」ていってるのと同じだ。そして捕まった時は、その時はおれが悪いのだ。捕まった、というその一事においてのみ、おれが悪いのだ、そう考えていたらしかった。

「いっぱいの茶のためなら世界なんか滅びていい」と、ドストエフスキーが「地下室」の住人にいわせたことを、音個は屋根裏で、それを言ってのけた、ただし半分は笑いながら。また、「罪と罰」を引き合いに出して、こう締めくくるのがいつものパターンだった。「もし、思いついたところで、彼らには何もできませんよ。彼らにそれを踏み越える力はないからです。品行法制にして無害で取るに足らない連中ですからね。永遠の戦い万歳です」-ラスコーリニコフ。

 つらくなってきた。もう本当のことを言おうか。みなさんに、しっかり実際の、ただ、事実、というだけの意味合いで、本当のこと、というだけですが、皆さんにきいてもらったほうがよさそうだ。知っておいてもらったほうが、よさそうだ。

 だんだん、僕のこの語り口もコザかしいだけになってきた気がするからだ。いや、ちがう! 僕にいわせれば、こういう、手法だ。メソッドだ。そしてドラマツルギーだ。どういう意味だか今、正確にちょっと判らないが、また今は調べるのもめんどくさいが、まあ、これもまたチキン野郎のやり方のひとつだ。

(続く)

混沌コントロール・山﨑雅之介

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混沌コントロール

1978年兵庫県尼崎市生まれ。作曲家、著作者、愚か者。政治活動結社「医療大麻開放党」(元「大麻自由党」)代表。IQ65 。  生まれ持ってのADHD患者であることが、誤診16年を経て判明したが、挙句、様々な薬物中毒に陥る。現在の日本の、特に精神医療に対して激しい怒りを持っている。これからも、持ち続ける。  と、思っていたが、2019年1月8日、捜査、及び、化学(科学)的根拠、令状文、また本人の自覚にかなり疑わしき部分が残る事情をもって「覚せい剤取締法違反」に問われ逮捕される。  およそ5ヶ月の勾留を経て、服薬量が大幅に回復(およそ十分の一の量にまでに減薬)。それでも、現在も、こりずに薬物問題に向き合っている。  その他、前科前歴多数。その殆どが間抜けな不注意によるもの。  バンド(地獄の一丁目)活動を経てバンド仲間から絶交される(実質見捨てられる形)にいたり、現在、アーティスト名を「混沌コントロール」と名乗り、「まったくライヴ活動をせずインターネット上だけで(つまりこの部屋から一歩も出ず…)世界を制覇してみせる」と断言。  2014年、本邦において初の動きとして創立に及ぶ政治活動結社「大麻自由党」が中国華僑新聞等のメディアにて世界的に着目を浴びたが、日本においてはその性質上メディアが全く動けず無視され続けるが、今後の展開が期待を孕む。(Wikipedia参照)  さらに2014年、CNNにて、その演奏姿が全世界に放映されるに至り、ひとまずは、宣言通りの野 望、その入り口にたどり着く。これから更に精進いたします。http://www.youtube.com/watch?v=1ExUt6i0boM&list=UUedHp6KcvCTPn-vEkXm8GwQ 混沌コントロール公式サイト(CTRL Global Label) http://konton-control.com/ 混沌コントロールサウンドクラウド https://soundcloud.com/konton-control https://soundcloud.com/konton-ctrl 混沌コントロールYoutubeチャンネル http://www.youtube.com/user/kontoncontrol 「この部屋から一歩も出ず、世界制覇」などと書いてはいたが、2013年5月頃、孤独死寸前の状況下において、拘留を受けたため、家賃が払えず、結局、部屋を追い出される。およそ、このあたりがその人生の第一部、完。  ミュージシャンとしての夢は、ゴールドディスクをいつか手にしてみせる!ということであるが、こないだ、すっかり更新忘れてて、 ゴールド免許さえ取得できなくなった のが、実際のところ。  2019年6月現在、フリーランス、在野において作曲、アレンジ、サウンドクリエーターの仕事を請け負っている。  さらに!現在、自伝をもとにした大長編作文小説執筆中。つづきは出版本で!詳しくは出版本で!!

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