音個の速度 一瞬の連続の一生(Web連載版)第三回

 ああ、すこしとりみだしてしまったようだが、つづけよう、こうなったら僕も、体当たりで勝負ですよ!? 勝負かけますよ!? …あ、すみません。えらそうなこといって、もうしわけない。 僕がこうやって取り乱してしまうのも、まあ、それは後でわかる。ではいこう。

 冒頭で僕はあいつを知らない、あったことなどない、と、皆さんに告げました。謝罪しなければならない。嘘、です。おそらく、もっとも、あいつを知ってる人間のうちの一人だ、と、あいつがいなくなった、今となっては、なぜか誇らしくさえ思えてくる。

 というのは、あいつに初めて出会ったのは高校生のときサッカー部で、だ。部活、サッカーでともに傷だらけになりながら、笑いあったなかなのだ。そして、その後、高校をともに出て、大学受験をともにぶちった、そして、そこからが音個の破滅の始まりだったのだろうと思う。はっきり思う! 一緒に数年間、バンド活動、そして同じくギタープレイヤー、山葉のPMS講師(音個はその先生を非常に尊敬している)にギターを教わり一緒に京都の専門学校に通い、毎日のように酒を飲みながら語り合い続けたなかだからだ。

「精神疾患ズ」。まったく不発のバンドだったが、僕ですら、ステージにあがったときだけは、あの音個、あいつも、それなりに、まあ、それなりに、かっこいい、あ、おっと、やばい、いいかけた、面白かった、と思う。「精神疾患ズ」、音個によるネーミングだ。「バンド名はこれでいかへん?」と言われた時に笑ってしまった勢いでOKを出してしまった。別になんか意味はない。単にごろが気に入っただけだ。ステージのたび、一緒にライヴをやらかしたバンドのギタリストたちは、あいつがいつも立っていた上手側のまえで、ちょっとした人だかりを作ってみていた。僕を差し置いて「山さん、ばりかっこええなあ!」という連中もいたのだ。そんなんいわれたら…、目の前で言われた僕はどうしなさい、と? 一回だけならゆるせるよ? 僕もそこまで張り合ってない! しかしそれが毎回続いた。テンションさがりますわな! 僕はしってるんですよ! あいつのだらしなさ協調性のなさ! いや、協調性がないんじゃない、わざとや! あいつは絶対わざとなんですよ! めんどくさいこといろいろ、すべて。

なのに、縁の下でがんばってる僕はほめてもらえない。やってられるかと…。僕、いい加減むかついたので、その「精神疾患ズ」とやらをやる気なくなってきました。だいたい、すべてあいつの曲だ。「みんなで作ろう」とあいつはワンマンバンドになることを嫌がったが、事実、僕の出る幕などまったくなかったのだ。

あいつは僕にソロを弾かせたがったが、いつも僕はあいつに任せた。あいつとしてはそういうところが気に食わなかったようだが、だからこそ僕はあいつに押し付けた。で、数年続けて、僕はほかにバンドをやりだすことになった。なった、というか、そうすることにした。あいつは、バンドをひたすら続けたがったが、僕は裏切ることにした。そして、タイミングが僕に味方した。あいつが、いろいろ、事故を起こして働けなくなったりして、だんだん、陰惨な薬物中毒に陥っていくのを尻目に、地元の連れみんなに、あいつがどんな状態か、ちくいち、話を持っていって、やっぱりみんなで裏切った見捨ててくれたわ、あんなやつ薬物なんかにおぼれるから、悪いんだ。そういうことにしておいた。いや、わかってる! 「薬物中毒」それが完全に、孤独で救いようのない、不治の病といわれてることは。でも、あいつが安易だったことも事実で、僕はそこを、というより、そこばかりを強調して、まさに「人間をクビにしてやった」といっても言い過ぎではない。なぜなら、最初にやりだした僕にさえはっきり、「完全に孤立してしまって、あいつ、すくいようなくなってるやんけ」、と思うまでに、周りのみんなの反応も、また鮮やかだったからだ。それをみていて、みんなを煽った僕が、「人間て、怖いな」、と思ったほどだ。なんせ、側でそれを聞いてると、誰しもがもう彼に「人間としては彼を見ていなかった」からだ。そのくせ、誰も実際に音個になにかしてやる、どころか、「悲惨な薬物中毒」といえば、近づくことさえできないのだった。遠くでコソコソ文句を言うのが精一杯、なのだった。ざまあみろ。

 でもしぶとい、しかし、しぶとい人間です。たたけばたたくほど、ただで終わってくれない! また逆に無視すればしたで永遠に図に乗ることは目に見えている! まさか、この期に及んで、復活、とか、キリストじゃあるまいし、ああ、そうか、でも、僕もうまい具合に裏切ってるしな。キリストと違ってまったくあいつは、うれなかったが!

 え、なにいま、僕、キリストとあいつを、比較にした? ワザと、に思えるかもしれませんが、僕の名前をまだ、みなさんに紹介していなかった。油田、と申します。いやいや(絶対いうと思った。タイミングを狙ったことは確かだが、でも違うんだ)、ユダ、じゃないアブラダ、と読むのだ。本当だ。アブラダトオル、と申します。僕にしろもし、たとえば銀貨で売られたキリストだが、銀貨なんて大げさはいわない。諭吉30枚ももらえたら、絶対うるに決まってる!

 本来のハナシの筋からは完全に脱線するが、最初から最後までこのハナシは脱線気味なので、というよりも脱線することにその本題があるようなものなので、言わせていただこう。僕がなぜ、このように、数年も前のことにこだわり続けてあるか、音個のほうでは、自ら僕の家に訪れて、ええ加減和解してくれへんか、と頭を下げにきたのに、それもその場では僕も、そうしようといったのに、すぐに手のひらを返してしまった。数年前から、僕自身が抜け出せていないまま、そのまま、なにひとつ、まさにあのまま、僕は十年近くもの時間をむやみにすごしてきたから、一見すると、音個のほうでも、まったくその発言が、昔のままに思えたのだ。むしろ、昔からくらべて、もっと、反社会的に見えたのだ。

 いや! 違う! 僕は、…怖かった。あいつが、もう、僕の知らない無理解と孤独の世界を傷まみれで生き抜いてきて(しかしそれでもまだ理解には程遠い!)もはや、僕の手の届くような、そんな人間でないかもしれない。それほどの夜の深みを徘徊し続けてきて、今は、全く別の人間のようになってしまってる、そんな気がして、考えるほどに恐怖感に変わってきたのだ。だから、一言も何も言わないままにインターネットではアクセスブロックという、一番他人を人間としてはみていない、おそらく携帯電話かパソコンの、画面しか見えてない、みるきもない、一番マナーのないやり方で、さらにもう一度、態度で絶交を示してやった。周りにも、

「僕は仲直りしてないで。またあいつ、そんなうそついてるん?」

と、言い張ってやった。最初の絶交ではそれなりに音個も、強がりながらも、ショックを隠さなかった。

ないていたらしい。(それでいい!)

しかし、同じこと、いや実際にはさらに、いや、さらに、というよりは、次こそは、本当に完全に手のひらを返した僕の、裏切りを食らった音個は、

次こそ

「おれは、一切悪くない。完全に裏切りやがった、あいつ」

と、真剣に怒ったのだ。

あいつとは長い付き合いだが、あいつが真剣に怒ることはほとんどないといえるくらいに、滅多にないことだ。ネットでは活字しか見えないので、皆さんにはどう見えてるのか知らない、たぶん、この人、常にショック受けてるか、なんか揉め事起こしてる? といった程度の認識だろう。見たことなくて、うわさをしか見聞きしない人は、まあ、一言だけ、誤解をといておいてやろうか、あいつ、普通に面白いし、おとなしいですよ。と、これも武士の情けだ。

僕は武士だ。

こう見えて武士だ。そして、武士に、二言はない。

 もし、僕があいつの元相棒でも友人でもなく一緒に音楽の専門学校まででて、常に一緒に練習や、活動をやらかして来ていなかったとして、ネット上での暴言だけを見ていたら、近づく気にはなれないな。お分かりのとおり、ご存知のとおり、僕はチキン野郎だ。それを誇りにしている。悪いのか?

 それで僕が君らになんか迷惑かけたか? ドーキンス「利己的な遺伝子」を読んでから、チキン野郎もありやな、と僕は確信したのだ。まあそれはいい。そして、あいつは確かに昔から、ずば抜けて、人気者だったし、なにか、よくわからないが、ほかの人間に強烈な影響を与えてしまう、また、かっこよいいい方になってしまって残念だが、ホモとかではなく、同性の気が集まってくる。あいつの面白さが影響を与えるのだ(しかし皮肉なことに、当時みんなから人気者だった、その反動もまた厳しいものになったのだ。ざまあみろである!)。

 音個の変な行動は、むかしから、ずっとだ。ずっととしか言いようがない。思い出したら、永遠にこのハナシ終わらなくなってしまう。そうなったら、たぶん、あいつの思う壺だ。だが、その奇行は、社会に対する反抗とか、そんな反骨なものではなく、むしろ逆だ。根本的に、彼がその幼少の頃からずっと、そうだったという、

「みんなを笑わせるのが、それが一番おもろいわ。授業なんかみんなのウケ狙うためだけやで。おれの学校での目的。でも、おれ、やりすぎてしまう場合あるやん? いや、ちゃんと、空気はよんでるつもり、でもやりすぎてしまうことはあるなあ。

…ボードレールにこんなハナシがある。わざと火薬の詰まった危険物のまえで、わざとライターかなにかで火をつけて爆発するかどうかをみる、ただ、自分の、運を、運命を識る為だけに、そんな爆発の危険に身をさらす人間がいる。まさにそれや」とこのようにいっていたがそれは僕もそのとおりだと思う。

 さてなぜ僕がこのように「あいつを最もよく知っている人間の一人」だと白状したか。それは実際にあいつとともにギターを弾いていた当時の話をここで一つ披露しておく必要もあるからだ。

 あいつが一時期「万引きだけで生活していた」そんな嘘みたいなことをあいつが実際にやっていたことの、事実に、ひとつのエピソードを付け加えるべきだ。そう思ったからだ。

 その当時、僕らはろくに働いてはいなかった。カネがなかった。特にあいつは、カネにあまり執着を見せなかったが、変な才能を有していた。カネが入れば、さあ、みんなであそびにいくぞ、と文字通りにばらまいて、そのあと、一銭も持っていない、それが常だった。そしてその頃、一緒に練習していたある日、音個の弦が切れてしまい、はりかえるギター弦がなく、僕がワンセットの廉価弦を音個に貸していた。僕はあげたつもりだった。こいつに貸す、ということは既にあげたのと全く等しい、そう思っていた。でも、結構、気にする方なんです。 

 冬のある日、僕らは大阪の楽器店をハシゴしてうろついていた。僕らは暇で、持っていたカネなど電車賃だけだったから、本当に見て回っていただけだった。で、そこで僕らが当時、大阪の「大きな大将」とあだ名をつけていた楽器店になにげに入った。五分ほど、ともに、楽器を眺めて、もし、何か欲しいものがあれば、最悪、ローンを組んで買うつもりだったが、五分もしないうちに彼が出よう、と僕に言った。特になにもなかったからだ。そしてつまらなかったので店を出て数歩歩いた、その時にあいつが、「油田、三倍にして返す」といっておもむろに上着のポケットからギター弦スリーセットをポケットから出し、僕に手渡したのだ!「え、なに?これ、いつのまに買ったん?」と尋ねると、「盗んだ」といった。「え!俺ずっとよこにおったやん、気づかんかった」と思ったが、音個はただ、笑っていた。そして、ちゃっかり僕も受け取ってしまったが、さらになんと驚いたことに、もう一つ、音個の上着の左のポケットには、自分用の盗んだ弦も入っていたのだった。

全く気づかなかった。僕は音個の、頭からつま先、全身を、驚きとともに見つめ、なにやってんだこいつ、いつか、なにをやらかすかわからないな、と思い、「いつか必ずこいつとは絶交しよう」、初めてそう思ったのが、この時でした。

…(つくづく続く)

混沌コントロール・山﨑雅之介

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混沌コントロール

1978年兵庫県尼崎市生まれ。作曲家、著作者、愚か者。政治活動結社「医療大麻開放党」(元「大麻自由党」)代表。IQ65 。  生まれ持ってのADHD患者であることが、誤診16年を経て判明したが、挙句、様々な薬物中毒に陥る。現在の日本の、特に精神医療に対して激しい怒りを持っている。これからも、持ち続ける。  と、思っていたが、2019年1月8日、捜査、及び、化学(科学)的根拠、令状文、また本人の自覚にかなり疑わしき部分が残る事情をもって「覚せい剤取締法違反」に問われ逮捕される。  およそ5ヶ月の勾留を経て、服薬量が大幅に回復(およそ十分の一の量にまでに減薬)。それでも、現在も、こりずに薬物問題に向き合っている。  その他、前科前歴多数。その殆どが間抜けな不注意によるもの。  バンド(地獄の一丁目)活動を経てバンド仲間から絶交される(実質見捨てられる形)にいたり、現在、アーティスト名を「混沌コントロール」と名乗り、「まったくライヴ活動をせずインターネット上だけで(つまりこの部屋から一歩も出ず…)世界を制覇してみせる」と断言。  2014年、本邦において初の動きとして創立に及ぶ政治活動結社「大麻自由党」が中国華僑新聞等のメディアにて世界的に着目を浴びたが、日本においてはその性質上メディアが全く動けず無視され続けるが、今後の展開が期待を孕む。(Wikipedia参照)  さらに2014年、CNNにて、その演奏姿が全世界に放映されるに至り、ひとまずは、宣言通りの野 望、その入り口にたどり着く。これから更に精進いたします。http://www.youtube.com/watch?v=1ExUt6i0boM&list=UUedHp6KcvCTPn-vEkXm8GwQ 混沌コントロール公式サイト(CTRL Global Label) http://konton-control.com/ 混沌コントロールサウンドクラウド https://soundcloud.com/konton-control https://soundcloud.com/konton-ctrl 混沌コントロールYoutubeチャンネル http://www.youtube.com/user/kontoncontrol 「この部屋から一歩も出ず、世界制覇」などと書いてはいたが、2013年5月頃、孤独死寸前の状況下において、拘留を受けたため、家賃が払えず、結局、部屋を追い出される。およそ、このあたりがその人生の第一部、完。  ミュージシャンとしての夢は、ゴールドディスクをいつか手にしてみせる!ということであるが、こないだ、すっかり更新忘れてて、 ゴールド免許さえ取得できなくなった のが、実際のところ。  2019年6月現在、フリーランス、在野において作曲、アレンジ、サウンドクリエーターの仕事を請け負っている。  さらに!現在、自伝をもとにした大長編作文小説執筆中。つづきは出版本で!詳しくは出版本で!!

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